橿尾正次展 |





私は中国製の黄ばんだ「毛辺」という半紙に、墨と筆をつかって線を引いている。勢い良く真っ直ぐに走ったり、とどまったり、曲がったり、万事、筆の動きにおまかせ……。
Automatic Drawing、日本では「自動描法」と呼んでいる。無意識の世界、意識下の世界を発掘する手法の一つである。そんなやり方を、そろそろ50年ばかりつづけている。
何枚も何枚も描いたなかから、私にとって面白い形、思わずできた形を和紙と鉄線をつかって立体的に組み立てる。人はそれをオブジェと呼んだり、「立体紙」と名づけて下さったり……。私がまだ出会わない形にめぐり会うまでつづけていこうと思っている。
橿尾正次


大好きな橿尾正次さんの作品を福井に見に行った。針金を骨格とした自由な曲線に、面として和紙をはる作品群。そのカタチは初源的な何かを思わせる。従来は柿渋や草木染めのいぶし銀なイメージだが、今回はカラフルで軽快な作品や、色彩/素材のコントラストの強い作品が加わり、みずみずしい雰囲気が会場に満ちていた。
特に感動的なのは「一本の赤い線」という作品。強烈な存在感だ。ムラのある味わい深い、あい染めの和紙を割るように差し込まれたアクリルの赤い線。現実と抽象が共存したような鮮烈な作品で圧倒された。橿尾さんはなんと80歳。このあわあわとして、先へ進もうとする意志。魅了された。





〈作家略歴〉
1933福井県南条郡北杣山村(現・南越前町)鋳物師に生まれる。
1944「北美文化協会」に入会し、土岡秀太郎氏に師事する(〜1973年)
1956福井大学卒業
〈発表歴〉
1963 個展(東京・銀座画廊)、作品2点が瀧口修造コレクション『夢の漂流物』に加えられた。
1995 ART LAGUNA’95ヴェネチアのラグーナ(潟)に橿尾のプランに基づいて現地の技師が制作、題名は”Waving Line”(長さ泊25m)、約2ヶ月間、水上に設置された。
1995 Silent Message、(コペンハーゲンに半月余滞在して制作、ピアノ線をつかった”Swingers”を一室に展示した。デンマークのイエ−ネ・バルスコア、日本の三梨伸、高田洋一と4人の作品発表。
1995 紙の世界(大阪、国立国際美術館)
1996 東京国際フォーラム開館にあたり、依頼により、作品「くろいかたち」、「ゆらゆら」の2点を制作、アートコレクションとなった。エスカレーター脇壁面に設置された。
1998 変貌する紙のカタチ−橿尾正次展(富山県入善町、発電所美術館)35点展示、そのうち7点は「ペーパー・モニュメント’98」(約6mの筒状の作品7点を天井から吊るしたもの)
2002 JAPAN IN BLEKINGE−日本の現代美術作家8名(川口淳、長岡国人、内藤絹子、重松あゆみ、山口崇、山田佐保子、山本まゆか)の作品をBLEKINGE州の5年の美術館に展示したもの。
2002 不思議いっぱい、紙のワンダーランド(群馬県立館林美術館)
2002 いろとかたちの誕生−空間と遊ぶ(五十嵐彰雄、山本廣とともに)(鯖江市資料館、旧瓜生貌住宅)
2003 植物的(川井昭夫とともに)(金沢市、金沢市民芸術村)
2004 橿尾正次展−空に遊ぶラクガキのかたち(青森市、国際芸術センター青森)
2005 橿尾正次展(東京、MMGギャラリー)
2006 越後妻有アートトリエンナーレ2006「大地の芸術祭」に参加、十日町市の三ッ山分校2教室に「田毎の月」、「自在−三ッ山に捧ぐ」の2点を現地で制作。山口啓介、本間純も同じ会場で発表。
2008 京都精華大学の版画科が企画したオーストリア北部の町・ゲラスの修道院を会場にしたコラグラフ講習会に参加、半月余滞在して10点制作。(講師・長岡国人)
2009 アート・ドキュメント2009、森で紙と鉄と遊ぼう(村岡三郎とともに)、屋内51点、屋外32点展示(あわら市、金津創作の森)、新作は「森の道しるべ」シリーズ10点、ほか池に”Waving Line”を浮かべた。
2012 3つのカラー(栄利秋、矢野正治とともに)、(大阪、ギャラリー菊)
橿尾正次展
会期:2013年10月2日(水)~10月20日(日)
会場:E&Cギャラリー
開廊時間:12:00〜19:00
休廊日:毎週月曜日、火曜日 ※14日(月・祝)は開廊
10月5日(土)
ギャラリートーク 16:00〜17:00
レセプション 17:00〜19:00

